世界の視点から見つめ直す、味噌󠄀の魅力
ひかり味噌󠄀󠄀はブランドコンセプトとして「自然の恵み、いただきます。」を掲げ、1936年より長野県で味噌󠄀作りを続けてきました。主原料である大豆を余すことなく使い、発酵の力を借りながら人の手で丁寧に仕上げていく。味噌󠄀は昔から、自然と人間の営みの中で生まれ、食卓に根付いてきた日本の伝統食品です。
アメリカの日系スーパで販売されている当社商品『ORGANIC MISO』シリーズ(下段)と『SHIO KOJI』(上段)
国内外における味噌󠄀のトレンド
しかし、残念なことに日本国内における味噌󠄀の消費量の低下に伴い、生産量も年々減少しています。その背景には、世帯人数の減少、核家族化による家庭の食卓の変化や食生活の多様化、個々人の働き方の変化などが挙げられるでしょう。私自身、実家では家族が1年間を通して食べる分の味噌󠄀を、父や祖母が自分たちで仕込み、それを味噌󠄀汁として当たり前のように毎日食べていましたが、学生になり一人暮らしを始めると、「作るのが面倒」などという理由から、途端に食べなくなっていきました。今では自分の体を整える食生活を心掛けているため、ほぼ毎日のように味噌󠄀汁を作って飲んでいますが、自炊をしなければ、おそらく味噌󠄀を食べる機会は確実に減ると思います。
出典:全国味噌工業協同組合連合会「出荷量推移」より
一方で、海外における味噌󠄀の消費量は増加しています。事実、味噌󠄀の輸出量・輸出額ともに年々更新し続けており、輸出先国第1位はアメリカです。「MISO SOUP」は「SUSHI」と並んで日本食として認知されているメニューの一つではないでしょうか。
出典:全国味噌工業協同組合連合会「輸出実績」より
なぜ、海外で「MISO」の需要が伸びているのでしょうか。その背景を知ることで今後、国内外において味噌󠄀のおいしさをどう伝えていくべきか、そのヒントが見つかるのではないかと思い、輸出先第1位であるアメリカへ行ってきました!ロサンゼルス(以下、LA)で開催された自然食品の展示会「Natural Products Expo(ナチュラル・プロダクツ・エキスポ)」と、現地のスーパーマーケットを視察し、そこで目にした“食の選ばれ方”から、海外で味噌󠄀の需要が伸びている理由を探り、それをヒントに味噌󠄀の魅力をどう広げていけるかを考えてみました。
カリフォルニア州発祥の人気スーパーマーケット「トレーダー・ジョーズ」未展開ながら、
日本でも通称”トレジョ”として知られている
LAで気づいた、食品における健康ニーズ
展示会やスーパーマーケットの売り場を歩いてまず感じたのは、調味料やスープなどでは「減糖」「減塩」「無塩」「50%脂肪分カット」「無脂肪」などのラインナップが豊富であることです。また、「オーガニック」「グルテンフリー」の食品も非常に多く目にしました。さらに「たんぱく質含有量」の訴求も広く見られます。「1食当たり、たんぱく質が●g補給できる!」とパッケージで訴求する商品を頻繁に目にし、(展示会では、そのような商品がほとんど!)肉や魚の加工品だけでなく、パンやパスタ、お菓子、飲料にまで、たんぱく質含有量の多さを訴求しています。後に調べたところ、2025年の調査では、約70%のアメリカ人が「たんぱく質は、積極的に補給しようとしている栄養素である」と回答していることがわかりました。
売り場に並ぶケチャップの種類。「減糖」「50%減塩」「オーガニック」など数多くの種類がラインナップする
日米で異なる「健康訴求」を比較
続いて感じたことは、食品における日本との「健康訴求」の違いです。日本では、数値や機能、効能と結びついて語られ、「医師が推奨」「機能性表示食品」など、専門家や法によって認められたテキストによる訴求がほとんどです。「血圧が気になる方に!」「疲れやすい方へ」など、商品パッケージに記載された訴求を見て購入した経験は、多くの方があるのではないでしょうか。
一方、LAで販売されている食品の商品パッケージでは、様々なマークでその特徴を訴求していることに気づきました。オーガニック、ヴィーガン、グルテンフリー、プラントベース、合成着色料不使用、BPAフリーなど。日本人である私から見ると、あまりに訴求が多く、選ぶのに迷ってしまいそうですが、LAの消費者は自分に必要な項目が書いてあるものを選んで購入します。
シイタケの「ジャーキー」。「ヴィーガン」「プラントベース」「グルテンフリー」「コーシャ」など様々なアイコンがパッケージに記載されている
彼らが大切にしているのは、
・低カロリー一辺倒ではなく、自分の体調やライフスタイルに合っているか。
・制限するだけでなく、食べたあとに気分よく過ごせるか。
・食事・睡眠・運動・メンタルを含めたトータルバランスが取れているか。
自身の健康に対し一つの正解を求めるのではなく、体調やライフスタイルに合っているか、それを続けられるか、を重視する考え方を持っている方が多いようです。こうした考え方は、言い換えれば「整える」ということではないでしょうか。無理に型にはめようとするのではなく、自分自身の状態に耳を傾けながら、少しずつ生活を調整していく。その積み重ねが自身の心と身体を整えることにつながっているように感じました。
日常で「整える」健康、そして味噌󠄀
LAのスーパーマーケットでは、数多くのサプリメントが販売されており、それらの需要が高いことも事実ですが、「日常の食生活で、無理なく健康を目指す」ことを大切にしている人も多いように感じました。味噌󠄀は、植物由来のたんぱく質を含み、毎日の食生活に取り入れやすい調味料です。加えて、「減塩」や「オーガニック」などの種類もあり、自分の体調や価値観に合わせて選びやすい点も支持されている理由の一つだと感じました。また、主原料である大豆や米を余すことなく使い、発酵の力によって保存性を高め、環境負荷も比較的低い食品です。これはまさに、「自然の恵みを余さずいただく」サステナブルな食文化であり、それも選ばれる理由だと考えます。
しかしながら、多民族国家であるアメリカでは発酵食品や味噌󠄀を、すべての人が同じように受け入れるわけではありません。現地で味噌󠄀を作り販売にも携わる方からは、発酵食品特有の味や香りに不慣れな方もいるため、「家庭で幅広く使われる調味料にはなりづらい」という声を聞きました。
だからこそ重要なのは、「これが良い」と一方的に伝えることではなく、「どのような原料を用い、どのように作られ、どのような価値をもたらすのか」を明確にし、必要とする人に選んでいただくことです。そして、現地で手に入る食材を使った味噌󠄀レシピを、その国・地域の食文化に寄り添って提案していくことも、私たち味噌󠄀メーカーの使命であると感じています。
ファーマーズマーケットで地場産のオレンジを選ぶ購買客
世界の視点で、味噌󠄀の魅力を再発見する
海外で日本のものが注目され、改めて価値が見直されることも少なくありません。例えば、抹茶や柚子は、海外で“MATCHA”“YUZU”として人気を集めたことで、日本でもその魅力が改めて注目されるようになった例の一つです。味噌󠄀汁の相棒のおにぎりも、海外人気が日本でのおにぎりへのイメージを再評価するきっかけとなっています。海外で目にする日本食の見慣れないアレンジに驚くこともありますが、固定観念にとらわれずに自由な発想を持つことは大切なことです。
ひかり味噌󠄀では、「そのまま食べておいしい」をコンセプトにした『CRAFT MISO生糀』や、「とろりとかける」液状タイプのボトル味噌󠄀『CRAFT MISO とろみ』など、味噌󠄀の新しい楽しみ方を提案しています。味噌󠄀汁や味噌󠄀炒めにとどまらず、洋風・中華・スイーツまで活用できるレシピを紹介し、味噌󠄀の可能性を広げてきました。国内で味噌󠄀の消費量が年々減少する今だからこそ、世界の食のトレンドや価値観を通してその魅力を捉え直し、発信していくことに大きな意義があると考えています。
海外向けには、現地で手に入りやすい食材を使い、各地の食文化やライフスタイルになじむレシピをホームページやSNSで発信し、味噌󠄀をより身近に楽しんでもらう工夫をしています。LAで見た、日常生活から体を「整える」という価値観と重ね合わせながら、味噌󠄀がこれからも人々の生活に寄り添い続けられるよう、ひかり味噌󠄀は今後も国内外へ発信を続けてまいります。





